江藤博美のまちレポート

福岡市議会議員 江藤博美(福岡市民クラブ)は福岡市西区や福岡市のまちづくりにむけて”動く・つくる・かえる”

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更新日 2019-03-28 | 作成日 2007-10-16

報告案件から

1.地下鉄七隈線博多駅延伸工事博多駅前陥没事故に伴う事業計画の見直しについて約49億円の事業費を追加し工期を1年半延期する見通し。
2.博多港ウオータフロント、MICE関連施設整備事業でWFのホールの検討状況について

  • MICE…Meeting(会議・研修・セミナー)、Incentive tour(報奨・ 招待旅行)、ConventionまたはConference(大会・学会・国際会議)、 Exhibition(展示会)の頭文字
  • WF…福岡サンパレスを継承する施設として会議場・ホール・展示場・ホテルなどの機能を持つ施設の仮称名

3.クルーズ船受け入れ強化に伴う港湾整備事業について
4.福岡市拠点文化施設(福岡市民会館の建て替えに伴う新たな施設計画)整備について
※12月議案は給与費改正に伴う減額補正ほか指定管理者の指定案件など40件が審議されました。
 紙面の都合上、詳細については福岡市議会ホームページをご参照ください。

オーストリアの林業

 人口約870万人のオーストリアの基幹産業の第1位は観光、第2位は森林・林業・木材産業です。特に林業技術、バイオマス活用技術は世界のトップランナーで、1987年に国民投票で原子力発電を否決しバイオマス発電等を推進しています。
 オーストリアではマイヤー・メルンホフ・フォレストテクニック社とヒッツェンドルフ地熱発電所を視察しました。

マイヤー・メルンホフ・フォレストテクニック社

 マイヤー・メルンホフ・フォレストテクニック社は、1850年に創設された従業員1万人を擁する、国内最大手の民間林業会社です。32,000haの自社林内に1,300kmの林道を整備し、1960年代初頭に欧州初のタワーヤーダを開発し、傾斜地でも効率的な木材生産を行っています。
 なお、森林の所有形態は、私有林69,5%、国有林15,7%、地域所有林10,9%公有林3,9%です。
 MMF社のロジェック・ヨハネスさんにお話をうかがいました。

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 林業が盛んな背景として①植生が600種と、日本の3,000種に比べて単純である②林業教育・研修システムが充実しており、教育を受けた人の待遇は3K(かっこいい、健康的、高収入)。フォレスターと呼ばれる森林マイスター資格を持つとキャリアアップにつながる③林道整備により大型林業機械を効率的に配置でき、生産性が向上する④建築技術の開発による木造建築シェアの拡大などがあげられます。
 また、循環型林業のために、どんな木でも伐採したら必ず搬出して利用する、という貴重な資源としての木材を無駄なく使い切る思想と仕組みが構築されています。ちなみに標準伐採期は、トウヒ・モミで80〜100年、カラマツは100〜120年、マツは70〜80年、ブナは100年以内です。
 さらに、山地の荒廃を防ぐため、2ha以上の皆伐を禁止し、伐採後の植栽を徹底させています。
 ヨハネスさんはオーストリアの民族衣装で現れ、グラーツでは10人に1人が森林関連産業に従事していること、森を守り活かすことが人にとってとても大事であることを熱心に話してくださいました。

マイヤー・メルンホフ・フォレストテクニック社の作業風景

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「ヒッツェンドルフ」地熱発電所

 グラーツから車で約60分のヒッツェンドルフ村を訪問し、地域発熱所(小規模チップボイラーによる熱供給システム)を視察しました。
 2008年小規模林家27人で協同組合を設立し、国の補助を受けて地域熱供給に取り組んでいます。
 チップの原木は全て間伐材で、10~15km圏内から組合員が間伐を行い、広大な敷地に運んで貯木し、組合調達の移動式チッパーで破砕してチップをつくります。組合はそれを購入し、事業収入分は原料購入価格を上乗せして組合員に還元します。
 オーストリアのバイオマス活用と地域熱供給システムについては次のような説明がありました。
 2006年、オーストリア経済を環境重視へと転換するためオーストリアバイオマス協会を設立しました。目的は、新エネルギーの普及とその経済効果を地方へもたらすことと、化石エネルギーに税金などの新たな付ボイラー室の前で熱供給システムの説明.jpgボイラー室の前で熱供給システムの説明加を働きかけることなどです。協会員は1,000人の個人と300の企業体で構成されており、「ヒッツェンドルフ」のような取り組みが300ヶ所で地域展開されています。
 オーストリアは一次エネルギーの23%を再生エネルギーでまかなっていますが、そのうち44%は水力です。残りがバイオマスで、木質バイオマスエネルギーは、その70%を占めています。オーストリアの一人あたりの木質エネルギー消費量は、EU内でフィンランド、スウェーデン、ラトビアに続いて第4位と、エコ・エネルギーの先進国で、3万人の雇用を生み出しています。

  • オーストリアの地域熱供給システムは事業形態、設備容量、熱供給範囲、間伐材調達範囲など、どれをとっても持続可能性を重視し、能力に応じた事業規模で実践していることが印象的でした。また、「補助金活用は初期投資のみで、自立運営が原則」「林地残材・間伐材の林道渡し及び移動式チッパーによる山元チップ化」「地域住民の中からのリーダーシップ」が実現化のキーワードであるとも感じました。
  • 表敬訪問した在オーストリア日本大使館提供の資料によれば、オーストリアの一次エネルギー国内総消費の構成(2013年)は、化石エネルギー比率が65%超(石油:35.4%、ガス:22.0%、石炭:9.7%)、再生可能エネルギー比率が30%超(バイオ燃料:13.1%、水力:11.1%、木材・可燃ゴミ:6.3%)となっています。電力分野に特定すると、再生可能エネルギー比率は65%強ですが、ほぼ全てが発電単価(3ユーロセント/kWh)優位の水力によるもので、木質バイオマスは地域熱供給・個別熱供給等の熱源利用が大半です。近年、産業従属的な大型木質バイオマスではなく、地域組合による熱供給事業が普及しており、「大型製材工場の木質ボイラー技術と都市部の地域熱供給技術の融合」による新システムと評価されています。

 これまで3回にわたって欧州林業視察報告を連載してきました。読みづらいレポートであったと思いますが、拝読頂き感謝します。公費での海外視察でしたので、できるだけ国内で活かせるような報告を心がけました。  
 私はこの視察で、日本の林業がこの半世紀で欧州にいかに大きく後れをとっているかを痛感しました。焦っても仕方がありません。一歩ずつ足元から取り組んでいきます。



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